【まめ知識】麦茶

麦茶は昔、「麦湯」と呼ばれていました。では、いつから「麦茶」と呼ばれるようになったのでしょう?

麦茶について

古くは平安時代の頃、穀物を主食として使用する傍ら、炒って粉にする糒(ほしい)加工が行われるようになると、麦を糒加工してお湯の中に溶かして飲んでいたといいます。これが麦茶の元祖であると考えられます。この頃の麦を糒加工したものを「みづのこ」、「はったい」、「炒り粉」、「香煎」、「麦こがし」等と呼ばれて親しまれてきました。また、麦茶が夏の飲み物となったのは、5~6月の刈入れ直後の麦を加工したものが、大変に香ばしくておいしかったから、とされています。
16世紀頃には、室町時代の公家や戦国時代の武将たちが好んでいたこと、庶民の間でも飲まれていたことが記録として残っています。また、この頃はお湯に溶かしてお茶として飲むだけではなく、武将が陣中に携帯し、お酒に溶かして濁り酒のようにして飲んでいました。

時代は移って、18世紀の江戸時代・元禄文化の頃になると、街筋に『麦こがし売り』が出現し、麦こがしを飲食させ、土産品として販売するなどして、大いに繁盛しました。

これが文化文政の頃になると、街の盛り場に『麦湯店』の屋台が現れて、若くて粋な女性が接客するようになりました。
人々は縁台に座って麦湯を楽しみ、憩いの一時を過ごす場であったとされています。しかしながら、江戸時代の末期になるとこの『麦湯店』は、減少していきます。明治時代に一度は復活しましたが、コーヒーを出す『カフェ』の出現により、洋風文化に押されるようにして影を潜めてしまうことになってしまったのです。

しかし、麦湯自体が影を潜めることはなく、明治時代になると一般家庭で大麦を炒って麦湯を作るようになり、家庭の飲み物へと姿を変えていきます。その頃の人々は、生水をそのまま飲むことには抵抗があり、水は必ず湯冷ましにして飲む、といった習慣がありました。でも、せっかくわかすなら湯冷ましよりは麦湯の方が味も風味もあって好ましい、と湯冷ましのような感覚で水代わりに飲んでいました。時には砂糖を溶かして味の変化を 楽しみながら飲んでいたといいます。

昭和30年代に入った頃、冷蔵庫が一般家庭に普及すると、現在のように麦茶を冷やして飲む「夏の風物詩」として慣れ親しんでいる形が主流になります。

一般的に『麦茶』という呼称が浸透したのは、昭和40年頃からです。それまでは、家庭で大麦を炒って使ったり、乾物屋で「いり麦」の名称で量り売りをしていました。弊社では、昭和38年に日本で初めて麦茶のティーパック商品を開発し、『江戸麦茶パック』の名称で発売しました。この製品は煮出し専用の麦茶で「煮出し殻の始末が簡単です」というキャッチフレーズで販売しました。弊社の麦茶商品発売をきっかけに、「いり麦」という家庭で用意するものから「麦茶」という大量生産して市場に並ぶ一つの商品へと変化しました。

その後は、水の中にパックを入れるだけで作れる「水出し」タイプの商品や、完成した麦茶の状態で封を開ければすぐに飲める飲料である「リキッド」タイプの商品等が次々に発売されました。

このように、麦茶は作る際の簡便性が高まるという変化こそ遂げたものの、今も昔も変わることなく日本人に愛される飲み物として暮らしの中に息づいているのです。

麦茶の効能

1.ノンカフェイン

コーヒーや紅茶等のお茶類には、多かれ少なかれカフェインの成分が含まれております。しかし、麦茶はお茶ではありますが、大麦が原料になっている為にカフェインが含まれておりません。カフェインは、神経系に作用する物質なので、眠れなくなったり、胃の粘膜を荒らしたりという悪い影響を与えてしまう場合があります。そのような点で、麦茶は小さなお子様からお年寄りの方まで誰もが安心して飲めるお茶なのです。

2.抗酸化作用

生物が生きていく上で必要な酸素の中には、「活性酸素」という、物質を酸化させる成分があります。金属が錆びたり、木が朽ちたりするのがわかりやすい例です。この「活性酸素」は、人間の体内ではガン、脳卒中、心筋梗塞、糖尿病等の多くの成人病を引き起こす要因となります。この物質は、大気中にも若干含まれておりますが、人間の体内で喫煙、飲酒、ストレス、激しい運動等を原因として生成されることもあります。通常ですと、この「活性酸素」を消滅させる「抗酸化作用」が普通に行われるのですが、年をとると体力の低下と共に衰えていきます。その為にできるだけ「抗酸化成分」を外部から補給して、抗酸化作用を高める必要があります。麦茶の効能については、あまり研究が進んでおりませんでしたが、神戸学院大学栄養学部・梶本五郎教授らの研究により、最近になって麦茶にもこの「抗酸化成分」が含まれていることが発見されました。麦茶を飲んで、成人病を予防しましょう。

3.胃の粘膜を保護する作用

静岡大学農学部・衛藤英男教授、京都薬科大学・吉川雅之教授の共同研究により、胃の粘膜を保護する効果があることが発見されました。ラットの胃の粘膜に傷を付け、麦茶の抽出成分を作用させたところ、傷を抑える効果が認められました。また、それほど高い効果ではなかったものの、「胃の粘膜を修復する」、「糖尿病の合併症を抑える」、「炎症を抑える」という効果もあることがわかりました。

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詳細は飲料原料(その四)を参照ください。



6月1日は麦茶の日
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